スタジオや収録現場でおなじみのMDR-CD900ST。その元になったのが「ST」のついていない「MDR-CD900」であることはよく知られています。初代MDR-CD900はコンシューマ向けの製品(いわゆる民生用)で、ハウジングの光沢、折りたたみ対応、カールコード、2wayプラグなどが特徴です。同時期に併売されたMDR-CD700は、ヘッドバンドが後のCD900STと同様やや小ぶりになり、折りたためないほか、コードもストレートであることなどの違いが見られました。
初代MDR-CD900が好評を博したことから、スタジオ向けにカスタマイズされて登場したのが「MDR-CD900CBS」です。型番からもわかるとおり、CBS(CBSソニー)向けに提供されました。そして一般スタジオ向けに提供されたのが「MDR-CD900ST」です。登場時はハウジングの刻印がMDR-CD900のままでしたが、途中からMDR-CD900STに改められました。
以下、写真とあわせてご紹介します。
左がMDR-CD900ST、右が初代MDR-CD900。ハウジングの仕上げはCD900STつや消し、CD900は光沢。L・R表記部の色も異なり、CD900STはL青・R赤なのに対し、CD900はLRともに金色。LR間の渡りケーブルの仕上げも、CD900はハウジングまで露出しているが、CD900STではハンガ内収められるよう変更された。渡り線が露出していると、ハンガとハウジングの間に渡り線が挟まり、傷んでしまうことがある。これを防止するための更新と思われる。
ヘッドバンド及びヘッドクッション部分は形状と長さが若干違うほか、表記も異なる。CD900STは「STUDIO MONITOR」でCD900が「DIGITAL MONITOR」。見た目ではわかりづらいが、スライダー部品が異なり、CD900は折り畳みが可能。
ビスの色は、CD900はブラックだったが、CD900STはシルバーとなった。ただしCD900STの前半ロットには黒ビスを用いたものがある。
L側の「クリックケースフタ」部品に表示される「MADE IN JAPAN」の表記。CD900ST、CD900いずれもプラスティック素材に刻印されていたが、CD900STの最近のロットでは、下の写真のように、シールによる表記に変更されている。
最近のMDR-CD900STは上の写真のように、銀色ビス、シール表記。
ケーブルの違い。これは見た目のままなのでわかりやすい。CD900はカールコードにステレオ2ウェイプラグを装備。MDR-CD900はストレートケーブルに6.3mmステレオ標準プラグ仕様。CD900には6.3mmステレオ標準プラグに変換するためのアダプターが同封されていた。
簡単にまとめると以下のようになります。
MDR-CD900ST | MDR-CD900 | |
---|---|---|
ヘッドクッションの表記 | STUDIO MONITOR | DIGITAL MONITOR |
ヘッドバンドの長さ | 短め | 長め |
コード | ストレート | カールコード |
プラグ | 6.3mmステレオ標準プラグ (一部2wayプラグも) |
2wayプラグ |
ハウジングの仕上げ | つや消し | 光沢 |
折りたたみ | 不可 | 可 |
イヤーパッドの厚み | 薄い | 厚い |
ミクロングラス | あり | なし |
LR渡しケーブルの仕上げ | ハンガ内 | 露出 |
クックケースの色 | L=青/R=赤 | LRとも金 |
初期モデルのMDR-CD900STは、ハウジングの表記が「MDR-CD900」のまま流通しました。今となっては、中古市場で初代・民生用のMDR-CD900を求める人や、修理を希望する人、また受託する側にとって、やや紛わらしいことになっています。初期のMDR-CD900STは、表記こそ「MDR-CD900」ですが、基本的な構造は現在MDR-CD900STと同様です。ロングセラー製品のため、構成部品にも何度か変更が見られます。CBS時代〜前半ロットは、サマリウムコバルト磁石のドライバーが使われていたと思われます。
いずれもMDR-CD900STだが、左の2つは「MDR-CD900」表記、右の2つが「MDR-CD900ST」表記。ただしそれぞれビスの色が異なっている。販売期間が長い製品なので、細かな部品の変更は何度も行われている。
こちらも「MDR-CD900」表記のMDR-CD900ST。ストレートケーブルだが、プラグが2way仕様になっている。MDR-Z900と同じプラグ。スタジオや専門学校等、現場からの注文によりカスタマイズされたバージョンがある。