SONY Headphone

SONY ヘッドフォン

日記(ブログ)のほうで使用感などをちょろちょろと書き残すことがあり、それが検索エンジンに拾われているようなので、自分用のメモ書きついでに静的なコンテンツとして残すことにします。SONY の MDR-CD900 系に興味のある方のご参考になればと幸いです。

各製品に対する評価には、少ながらず筆者の主観が含まれていることをあらかじめご承知おきください。また内容には十分配慮して記述しているつもりですが、内容の確実性を保証するものではありませんので、併せてご了承ください。

MDR-CD900

言わずと知れた、と言いたいところですが、一般には後述の業務用モデル MDR-CD900ST のほうが有名です。ここでご紹介する MDR-CD900 (末尾にSTがつかない) は、MDR-CD900ST の前身となるモデルで、1980年代にコンシューマ向け (民生用) として流通したものです。型番に「ST」がつく MDR-CD900ST は、MDR-CD900 を業務用に調整して登場したモデルです。

MDR-CD900 のコンシューマ向け後継機種は MDR-CD999 や MDR-Z900 (海外では MDR-V900 または MDR-7509) であり、MDR-CD900ST は業務用に扱いやすく改良したマイナーチェンジ版のような形です。

MDR-CD900 は、日本でオーディオ CD (CD-DA) が普及し始めたころに、CD のクリアな音声を楽しむためのデジタルモニターとして発売されました。当時の定価は 25,000 円で、高級なオーディオ製品のひとつだったことがうかがえます。

振動板はアモルファスダイヤモンド蒸着振動板 (ダイアフラム)、マグネットはサマリウムコバルト磁石が採用されています。折りたたみができる構造で、コードはカールコード、プラグは金メッキ仕様の 2 ウェイプラグです。

音質

音質はきわめて繊細かつクリアです。現在にまで引き継がれている「原音への忠実さ」を保ちながら、低音から高音まで全体的になめらかに元気よく鳴らしてくれます。独特の「空気感の再現」は特筆に値すると思います。一方で、低音は最近のパワフルな音を出すヘッドフォンに比べると控えめかもしれません。これは SONY のひとつのカラーと言えます。

ヴォーカルはくっきりと聞こえます。MDR-CD900ST の評価にしばしば見られる、「サ行のキツさ」を感じることはありません。ヴォーカルは目立ちつつ、それでいて楽器の音もしっかり聞こえます。クラシックにしてもバンドにしても、楽器それぞれの再現性が高いと感じます。

ギターやベースの音も上品かつ力強く耳に入ってきますし、ドラムスもライブで聴いているような鮮やかさです。ピアノが入る曲の場合、艶やかな質感が十分保たれていて、ピアノがバンド (ベース、ギター、ドラムセット) にマッチすることをあらためて実感させられます。歌謡曲を聴けば、ヴォーカルからオーケストラまで満遍なく楽しめます。

何につけてもバランスの良さが秀逸です。先述のとおり、低音はやや控えめに感じ、低音重視の方には物足りないかもしれません。しかし弱いわけではなく上品と表現できます。低音を強くしたければ、ヘッドフォンアンプやイコライザで調整するのが良いでしょう。

イヤーパッドと装着感

イヤーパッドは MDR-7506 や MDR-V6 と同じ、分厚いタイプです。MDR-CD900ST のソフトで薄いタイプに交換すると、やや迫力がアップし、MDR-CD900ST 寄りになりますが、それでもネガティブな鋭さを感じないので、交換して使ってみるのもまた楽しいと思います。

側圧は、MDR-V6 や MDR-7506 に比べると緩めで、長時間使っていても疲れない印象です。ヘッドバンド、ヘッドクッションも MDR-7506 や MDR-V6 と設計が同じ (ヘッドクッションの表記に違いはあります) ですから、消耗した場合には交換が可能です。なお、MDR-CD900ST のベッドバンド、ヘッドクッションとはサイズやカーブが違うため、CD900ST のものと交換すると、装着感や側圧、感触の違いが出ます。

MDR-7506 と MDR-CD900ST どちらに近いか

リスニング環境向きという点では MDR-7506 寄りです。音の繊細さと明るさは MDR-CD900ST と似ています。MDR-7506 にはネオジムマグネット版(現行ロット)とサマリウムコバルトマグネット版(初期ロット)がありますが、サマリウムコバルト版の MDR-7506 に近いです。

MDR-CD900ST のように、原音重視でクリアなところは似ていますが、MDR-CD900ST に比べてマイルドです。MDR-CD900 は、MDR-7506 と MDR-CD900ST 両方の旨味を併せ持ったヘッドフォンといえます。

幸いなことに使用されているパーツが現行品の MDR-7506 とほぼ同一設計であることから、ドライバーとプラグ付きコード以外は交換でき、保守性が容易です。プラグ付きコードも型番は違いますが MDR-7506 と同等であるため、誤って断線してしまったときは交換することができます。ドライバーだけは替えがきかないので、コイルを飛ばしてしまわないよう大切にしたいです。

発売当時の価格(定価)は 25,000 円でした。もし今新品が手に入るのなら、この値段以上でもよいので、ぜひもう 1 台買いたいと思える機種です。

仕様

仕様 (MDR-CD900)
型式/Type 密閉ダイナミック型
ユニット/Driver Units φ40mmドーム型
振動板/Diaphragms アモルファスダイアモンド蒸着振動板
マグネット/magnet サマリウムコバルト
インピーダンス/Impedance 63Ω
感度/Sensitivity 106dB/mW
最大入力/Power handling capacity 1,000mW
再生周波数/Frequency response 5〜30,000Hz
重量/Weight 230g (コード含まない)
定格電力/Rated power -
折りたたみ/Fold
コード/Cord 3m, LC-OFCリッツ線, カールコード, 片出し
プラグ/Plug type ステレオ 2 ウェイプラグ (金メッキ)
発売時期/Release 1985 年〜
価格/Price 25,000 円

MDR-CD900ST

MDR-CD900ST は、民生機として販売された MDR-CD900 を業務用にチューニングしたモデルです。当初は MDR-CD900CBS として CBS ソニー向けに供給された後、一般スタジオや業務用途向けに MDR-CD900ST としてリリースされました。登場からしばらくの間は業務用として扱われコンシューマ市場に出回ることが少なかったためか、レアアイテムのように扱われたこともありました。

業務場面で多用されていることからロングセラーとなっており、発売から現在までの間に、部品は何度かマイナーチェンジされています。ロットによりドライバーやハウジングの細かな構造が異なるため、音の特性にも多少の違いが見られます。しかしながら基本設計は変わっておらず、プロの現場で使われていることを想定し、部品が変わっても業務に影響が出ないよう、よくチューニングされていると思います。

MDR-CD900 との違い

外見は MDR-CD900 と似ていますが、次のような違いがあります。なお、MDR-CD900 とほぼ同じ時期に MDR-CD700 という機種が販売されており、パーツの仕様はむしろそちら寄りです。

ポイント MDR-CD900 MDR-CD900ST
折りたたみ できる (MDR-V6・MDR-7506 と同じ) できない (MDR-CD700・MDR-V7 と同じ)
ヘッドバンドのサイズ 大きめ (MDR-V6・MDR-7506 と同じ) 小さめ (MDR-CD700・MDR-V7 と同じ)
コード カールコード ストレートコード
プラグ 金メッキステレオ 2way プラグ φ6.3mm ステレオ標準プラグ
ヘッドバンドの文字 DIGITAL MONITOR STUDIO MONITOR
ハウジングのデザイン 光沢仕上げ つや消し仕上げ
クリックケースの L・R 表示 L/R ともに金 L=青/R=赤
イヤーパッド 厚め (MDR-7506・MDR-V6・MDR-V7・MDR-CD700 と同じ) 薄め(MDR-CD900ST のみこのタイプ)
ミクロングラス なし あり
LR間ケーブルの仕上げ 露出 (MDR-V6・MDR-7506・MDR-CD700 と同じ) ハンガー内 (MDR-V7 と同じ)
ハウジングの型式表記 MDR-CD900 初期 : MDR-CD900 / 後期 : MDR-CD900ST

登場当初のものは、ハウジング部に「MDR-CD900」と表記されていたので、今となっては少し紛らわしいことになっています。のちに現行の MDR-CD900ST という表記に変わりました。

音質

音質はたくさん議論されているとおりです。とにかくフラットで分解能の高さが特徴となっています。モニターヘッドフォンの名の通り、主な目的は「音を楽しむ」というよりは、「音をつくる」作業に主眼が置かれているといっていいでしょう。機器の出力チェック、ノイズチェックなどにも使えます。テレビ番組などの映像収録の際、音声さんがよくつけているのをよく見かけます。

音楽を聴くときには、どの楽器がどのようなメロディラインを描いているのかが、とてもわかりやすく聞こえるので、耳コピしたいときにも重宝します。

「リスニングに向かない」と評されるのをしばしば見かけますが、個人的にはそう思いません。「耳が痛いような音が出る」という意見もありますが、痛いほど音量を上げなくても十分クリアな音が出ますので、ボリュームを調整すれば不快なことはありません。どうしても気になる方は、イヤーパッドを MDR-7506 用に交換することで、音はマイルドになります。

音楽が好きでかつ SONY 好きにとっては、買って損のない製品と思います。アーティストがレコーディングで使っているのをよくみかけますので、何となくプロと同じ気分が味わえる雰囲気だけでも十分に楽しめる製品だと思います。

仕様

仕様 (MDR-CD900ST)
形式/Type 密閉ダイナミック型
ドライバーユニット/Driver Units φ40mm ドーム型 (CCAW 採用)
振動板/Diaphragms PETフィルム
マグネット/magnet ネオジム(初期の一部はサマリウムコバルト)
インピーダンス/Impedance 63Ω
音圧感度/Sensitivity 106dB/mW
最大入力/Power handling capacity 1,000mW
再生周波数帯域/Frequency response 5〜30,000Hz
重量/Weight 200g(コード含まず)
定格電力/Rated power -
折りたたみ/Fold 不可
コード/Cord 2.5m, ストレートコード, 片出し
プラグ/Plug type ステレオ標準プラグ (φ6.3mm)
発売時期/Release 1988 年〜
価格/Price 18,000 円 (税抜)

MDR-7506

2022年現在でも、MDR-CD900STと共に現行品として入手できるロングセラー製品です。初代 MDR-CD900 の海外版である MDR-V6 の業務用として、やはり海外向けに登場した機種です。MDR-7506 が登場した 1990年代は、業務用途のヘッドフォンとして日本国内では MDR-CD900ST が、海外では MDR-7506 が投入されました。のちに日本国内でも流通するようになり、MDR-CD900ST の海外版として知られることになりました。

折りたためる構造やカールコード、2way プラグなどの特徴からしても、MDR-CD900 とほぼ同様の仕様です。音の傾向も MDR-CD900 を思わせる鮮やかさがあり、特にサマリウムコバルト版はよく似ています。

国内向けと海外向け

先行して流通した海外版は、青色を基調としたデザインのしっかりしたパッケージに入れられて販売されました。パッケージにはメンテナンス用の保守マニュアルが含まれており、長く大切に使える配慮が感じられます。とくに初期出荷分のドライバーは、MDR-V6 中期ロットと同じサマリウムコバルト磁石が採用されており、保守用のパーツナンバーも共通でした。また、パッケージにもサマリウムコバルト磁石を採用していることが明記されており、このころのロットは「MADE IN JAPAN」だったようです。

後に、日本国内向けに白箱パッケージの製品が登場しました。このころにはドライバーの部品に変更があったようで、ネオジム磁石になり、初期ロットとは少し違う鳴り方をします。MDR-Vxxx や MDR-7xxx は海外向けの型番だったはずなので、MDR-7506 が国内向けに生産され販売されているのは興味深いです。

MDR-7506 は、MDR-V6 や MDR-CD900ST と同様にロングセラーなので、同じ型番であっても、ロットによって使われている部品が異なります。海外向けの青いパッケージでも、比較的新しいロットはネオジム磁石を採用していることが記載されています。サマリウムコバルト版を狙って入手したい場合は注意が必要です。海外各国の SONY ウェブサイトや通販サイトなどのスペックを見ると、すでに多くのところでネオジム磁石使用の旨が記されています。生産国は、一時的に中国の時代もありましたが、現在はタイ生産となっています。

海外向け(青箱)=サマリウムコバルト、国内向け(白箱)=ネオジム、ではなく、出荷ロットによって部品の違いがあると認識しておくとよいです。MDR-CD900ST と同様に、取付ビスの色が黒色のものと銀色のものがあります。おおむね古いロットは黒、現行ロットは銀ですが、必ずしもドライバーの新旧と一致しているわけではないようです。

ちなみに「ネオジム磁石」を「ネオジウム磁石」と表記するケースを見かけますが、誤用とする説があります。英語表記は「Neodymium」ですから、読み方をカナで表すと「ネオジミウム」となります。なお「ネオジム」はドイツ語表記の「Neodym」が元になっているそうです。

音質

先述のとおり、ネオジム版とサマリウム版では音の性質が違います。現行ロットであるネオジム版は、正当派リスニング向けといえそうです。全体的にそつなく元気よく鳴らしてくれる印象です。低音もしっかり鳴ります。中音域も無難ですが、高音域は MDR-CD900ST に比べるとわずかに甘く感じます。イヤーパッドの違いによるところもあるでしょうが、分解能では MDR-CD900ST に一歩譲るものの、聴きやすさでは MDR-7506 のほうが上手です。

主に海外で流通した前半ロットのサマリウムコバルト版は、サマリウムコバルト磁石らしい明るく抜けのよい音が楽しめます。MDR-CD900 の「音楽を楽しめる」特長と、MDR-CD900ST の「原音忠実・分解能の高さ」を併せ持った名機といえます。MDR-CD900 に比べると、元気さでは本機のほうが上ですが、質感や上品さでは MDR-CD900 に軍配が上がります。

コストパフォーマンスと品質

希望小売価格は MDR-CD900ST と同じ 19,800円 (税込) ですが、安いところでは 10,000 円程度で購入することもできるので、コストパフォーマンスは非常に高いと思います。国内版、海外版どちらにしても、同価格帯のヘッドフォンにはなかなか見られないクオリティです。数千円程度のヘッドフォンを使っていてやや不満のある方には、特におすすめです。

なお、サマリウムコバルト版はだいぶ前に出荷が終わっており、新品で入手することは難しいと思います。サマリウムコバルト版を決め打ちで手に入れたい方は、海外向けの青箱を在庫していて、かつパッケージ裏面の表記を確認できるショップにお願いするくらいなのですが、現実的には難しそうです。

仕様

仕様(MDR-7506)
型式 / Type 密閉ダイナミック型 / Circum-aural, closed / Dynamic, closed
ユニット / Driver Units 40mm ドーム型 (40mm ダイアフラム)
振動板 / Diaphragms 高分子フィルム
マグネット / magnet 現行 : ネオジム / 初期 : サマリウムコバルト
インピーダンス / Impedance 63Ω
感度 / Sensitivity 106dB/mW
最大入力 / Power handling capacity 1,000mW
再生周波数 / Frequency response 10〜20,000Hz / 5〜30,000Hz
重量 / Weight 230g (コード含まず) / 8.1oz
定格電力 / Rated power 0.5W
折りたたみ / Fold
コード / Cord 1.2m (伸張時 3m), OFC Cord, カールコード, 片出し
プラグ / Plug type ステレオ 2 ウェイプラグ (金メッキ) / Gold, Stereo Unimatch plug / 1/4 and 1/8
発売時期 / Release 1991 年〜
価格 / Price 19,800 円 (税込)

MDR-Z900 / MDR-7509

ダイアフラムにアモルファスダイヤモンド蒸着振動板を採用したことで、名実ともに MDR-CD900 の直系の後継機として知られる機種です。ただしマグネットは、MDR-CD900 で使われたサマリウムコバルトではなく、ネオジムになっています。

海外では当初 MDR-V900 として出回りましたが、のちに本体のデザインが少し変更になり、MDR-7509 として販売されました。外見の違いこそありますが、スペック的には同じなので、同等品と考えてよさそうです。

音質

音質 MDR-CD900 の流れを汲んだものですが、ドライバーが 50mm (MDR-CD900 は 40mm) になっており、ドライバーと耳の距離は離れています。本体の形状も、従来機とはだいぶ異なっています。イヤーパッドも MDR-CD900 が耳たぶを押さえるくらいの大きさだったのに対し、こちらは耳をすっぽり覆う形なので、音の聞こえ方はだいぶ違います。

高音も低音もバランスよく艶やかで非常に綺麗なのですが、MDR-CD900・MDR-CD900ST の流れである「原音忠実」、「サッパリ系」からは少し離れるような印象で、リスニング用の音を出すための工夫が音質によく反映されている機種だといえます。全体的な艶やかさは高く、音楽を十分に満喫することができます。

MDR-CD900 の後継者?

本機種は、音楽を楽しむには最適の機種です。耳をすっぽり覆ってくれるので、耳たぶが圧迫されることもありません。SONY の旧来機種ではあまり強調されなかった低音も、この機種はしっかり鳴ります。MDR-CD900 に比べると、ヴォーカルのくっきり感はやや控えめですが、気持ちよくリスニングできることに違いありません。スタジオ・モニターとして設計されたのではなく、リスニング用に作られたことが感じられる製品です。

MDR-CD900 の面影を残す良品ですが、ドライバーが 40mm から 50mm に拡張されており、MDR-CD900 からはだいぶ様変わりしています。この形状は、後継機種である MDR-Z900HD / MDR-7509HD に引き継がれます。

仕様

主な仕様は以下のとおりです。

仕様 (MDR-Z900 / MDR-V900 / MDR-7509)
型式 / Type 密閉型 / Circum-aural, closed
ユニット / Driver Units 50mm ドーム型 (OFC ボイスコイル採用)
振動板 / Diaphragms アモルファスダイアモンド蒸着振動板 / Amorphous diamond diaphragms
マグネット / magnet ネオジム / Neodymium
インピーダンス / Impedance 24Ω
感度 / Sensitivity 107dB/mW
最大入力 / Power handling capacity 3,000mW
再生周波数 / Frequency response 5〜30,000Hz
重量 / Weight 300g (コード含まず) / 10.5oz / 10.6oz
定格電力 / Rated power -
折りたたみ / Fold
コード / Cord 3m (伸張時) / 9.8ft, LC-OFC クラス 1 リッツ線 / OFC Cord, カールコード, 片出し
プラグ / Plug type 金メッキステレオ 2 ウェイプラグ / Gold, Stereo Unimatch plug / 1/4 and 1/8
発売時期 / Release 1992 年 8 月 20 日発売 (MDR-Z900)
価格 / Price 25,000円 (MDR-Z900)

MDR-Z900HD / MDR-7509HD

MDR-Z900 / MDR-7509 の後継モデルとして発売されました。しばらくの間は旧機種と平行して出回っていたため、どちらか選んで買うことができましたが、のちにこちらのモデルだけが販売されました。2022 年現在では、いずれのモデルも販売終了となっています。

再生周波数特性が従来の 5〜30,000Hz から 5〜80,000Hz にまで引き上げられているのが大きな特長です。人間の可聴周波数域の上限はおおむね 20,000〜30,000Hz 程度までといわれますが、不可聴域の音まで再現することで、音場をより豊かに表現できるというコンセプトが感じられます。

音質は素晴らしいです。HD がつかない旧機種を支持する声も多いですが、HD 付きの本機種も、SONY らしい良い機種だと思います。低音はおとなしめ、高音が輝いている、という評価をよく目にします。

仕様

仕様 (MDR-Z900HD / MDR-7509HD)
型式 / Type 密閉ダイナミック型 / Circum-aural, closed / Dynamic, closed
ユニット / Driver Units 50mm ドーム型 (OFCボイスコイル採用)
振動板 / Diaphragms HD ダイヤフラム
マグネット / magnet ネオジムマグネット / Neodymium
インピーダンス / Impedance 24Ω
感度 / Sensitivity 107dB/mW
最大入力 / Power handling capacity 3,000mW
再生周波数 / Frequency response 5〜80,000Hz
重量 / Weight 300g (コード含まず) / 10.5oz
定格電力 / Rated power 1.0W
折りたたみ / Fold
コード / Cord 3m (伸張時), LC-OFCクラス1リッツ線 / OFC Cord, カールコード, 片出し
プラグ / Plug type 金メッキステレオ 2 ウェイプラグ / Gold, Stereo Unimatch plug / 1/4 and 1/8
発売時期 / Release 2006 年 2 月 21 日
価格 / Price 28,350 円 (MDR-Z900HD) / 265.00US (MDR-7509HD)

MDR-V6

初代 MDR-CD900 の海外版として発売されたモデルです。見た目は MDR-CD900 と MDR-7506 と似ています。初代 MDR-CD900 と同じように、折りたたみ可能、カールコード、イヤーパッドも分厚い MDR-7506 タイプです。MDR-CD900 との違いは、ハウジング外見の仕上げがつや消しであること(MDR-CD900ST と同じ、ただし縁取りの仕上げが異なる)、カールコードケーブルの素材が少し違うこと、コネクタが金メッキではないこと、などです。

海外市場においては、同仕様のまま「for Professional」として MDR-7506 に引き継がれたのですが、MDR-V6 も長い間併売されました。日本国内では、Amazon やサウンドハウス等から購入可能でしたが、惜しまれつつ生産終了となり、現在は取扱いがありません。なお、パッケージは一度大きく変更されています。

初期から中期ロットはサマリウムコバルト磁石が採用され、後期ロットはネオジム磁石に変更されています。最初期のドライバーには、MDR-CD900 と同様の磁石が採用されていました。ビスの色も当初の黒色でしたが、のちに銀色へ変更されました。

入手方法

海外モデルということもあり、国内ではあまり出回らず、レビューも少なかったのですが、その後サウンドハウスや Amazon などでの取り扱いがあったおかげで手に入りやすくなり、いろいろなウェブサイトで紹介されています。

2022 年現在は新品での入手は難しくなっています。こちらもロングセラー機種なので、中古市場で状態のよいものが出回っており、比較的求めやすい価格で手にすることができます。

音質

最初期のロットは、MDR-CD900 に近い印象です。MDR-V6 と MDR-CD900 を聞き比べてみると、細かい表現での違いが感じられます。振動板(ダイヤフラム)の素材の違いによるところが大きいかもしれませんが、遜色ない良い音を鳴らしてくれます。なお中期ロットでは、ドライバー部品が共通となったサマリウムコバルト版 MDR-7506 とはほぼ同じ印象です。

各種部品が異なる MDR-CD900ST とは違う音です。特に低音の表現が MDR-CD900ST よりもしっかりしています。ドライバーの違いはもちろん、イヤーパッドの違いとミクロングラス有無が大きく関係していると思います。まずイヤーパッドは MDR-CD900 や MDR-7506 と同じ厚みのあるタイプです。また、MDR-CD900ST に入っているミクロングラスがありません。ヘッドバンド、ヘッドクッションの大きさ、カーブも異なりますから、側圧の違いもあります。音質とは関係ないかもしれませんが、折りたたみの可否、LR間のケーブルの仕上げも違っています。

SONY らしさを残したまま、今風な音を鳴らしてくれる優等生的な音質と感じます。MDR-CD900ST の新鮮さもあり、また MDR-CD900 のような地味なクリアさも持ち合わせています。力強くもしつこくないので、長時間聴いていても疲れにくく飽きのこない使用感です。これが実売 10,000 円程度で入手できたことを考えると、MDR-7506 同様、かなりコストパフォーマンスの高い機種だと考えられます。

生産終了が何度となく噂される機種でしたが、ついに現実となりました。もっとも、ほぼ同じ仕様である MDR-7506 と併売されていたことのほうが不思議だったかもしれません。現在も MDR-7506 を継続してくれている SONY に感謝したいと思います。

仕様

仕様 (MDR-V6)
型式 / Type 密閉型 / Circum-aural, closed
ユニット / Driver Units 40mm
振動板 / Diaphragms 高分子フィルム
マグネット / magnet 現行 : ネオジム / 初期 : サマリウムコバルト
インピーダンス / Impedance 63Ω
感度 / Sensitivity 106dB/mW
最大入力 /Power handling capacity 1W
再生周波数 / Frequency response 5〜30,000Hz
重量 / Weight 230g (コード含まず)
定格電力 / Rated power 0.5W
折りたたみ / Fold
コード / Cord 3m, Oxygen-Free Copper, カールコード, 片出し
プラグ / Plug type ステレオ 2 ウェイプラグ (3.5mm / 6.3mm) ※金メッキではない
発売時期 / Release 1985 年〜
価格 / Price 実売 9,000 円〜12,000 円前後

総評

製品のスペックは SONY のメーカーカタログや各種ウェブサイト上の情報を参考にしています。製品に対する評価は、筆者個人の判断にすぎませんので、異なるご意見をお持ち方もいらっしゃると思います。筆者の意見を強くアピールし、同意を求める意図はなく、これらの製品に興味をお持ちの方に少しでもお役に立てれば幸いです。